梅林公園に行こう2015年01月28日 01:20

梅林公園に行こう
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 酒盛りになってきたといっても、うっかり飛び出せば、一口にアングリやられては大へんだ。だが、虎穴に入らずんば虎児は得られんとも思い直し、そうして優柔不断では不正直者のすることだ声に出し、よし、と決断をした。

 ・・優柔不断と正直には何の関係もないとは思うのだが、人の決断とは、このようにして決まる。酒好きは酒を見ると、ずいぶんガマンをする。これだけガマンしたのであるから、もう飲んでも良かろうとか思う。
第一、今日は正月だ、彼岸だ、卒業だ、誕生だ、記念日だ、いいサカナ買った、残念会だと言い、飲めん者は使えんとかも言うから、根拠など何もいらんのである。ガマンといっても30分ほどだったのだが。頑張り者で正直者には、大抵が許される。ワシントンの話など、子どもでも分かることなのだ。

 さあ、後は、タイミングだ。餅つきであれば、合いの手はキネの上がる直前にしなければならん。さて、この場合は-、おお、そうだ、カシラに酒を注がれている時ときであろう。杯を投げられんのだからな。
「ええい。食われたら、それまでよ」と、腰に斧をさし、帽子を鼻頭までかぶって、鬼どもの歌に合わせ「よう、こりゃこりゃ」とか言いながらカシラ鬼の鼻先へ飛び出した。ああっと、ビックリしたのは鬼の方だった。「何だ、これは」と総立ちになっての大騒ぎ。

 だが、善兵爺さんは、トックリをラッパにくわえ、拍子を取って飲むわ、ひょっとこ踊りはするわ、左へ右への大立ち回り、くるりくるりと跳ね回りながら「よう、こりゃこりゃ」と酔声を出して踊りまくった。早く酔ったが勝ちなのだ。これには、鬼どももみんな釣り込まれ、いっしょに手拍子を合わせ「いいぞお、もっとヤレヤレ」と、はちきれんばかりの大笑いなってしまったではないか。こうなると、これは兵法なのか、飲んべえなのかは分からないのだが。

 夜もふけ、踊りがすむと、カシラ鬼は「爺さん、明日も来て踊るのだぞ」と言う。
「へえへえ、参りますとも。今晩は急なことで、稽古をしていませんでしたから、明晩までには、おさらいをしてまいりましょう」と言うも、三ばんめに座っていた鬼が「約束を違えさせないために、何か”質”を取ろう」と言い出した。
 では、帽子か斧かとなったのだが、カシラの一声「コブが良い」に決まった。善兵爺さんは心の中では「しめた」と思いつつ「おやおや、とんでもない。目玉を抜かれましても、鼻を切られましても、このコブだけは、どうかごかんべんを。長年、宝のようにぶら下げている、大事な大事なものですから」とびっくり顔をした。
 ウソも方便だ。たまになら、正直者には許されるのだ。あくまでも偽善では無いのだ。

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